女装と男装の非対称性のはなし
- suzu tsukihara
- 2017年9月30日
- 読了時間: 4分
わたしの初めて公開したフリーゲーム「First Fantasy」は、フラグ立て無しで世界のどこにでも行けたり、順序自由でクラスチェンジアイテムを集めたりできるRPGです。
タイトルでお分かりの通り、ファイナルファンタジー(とくに3,5とタクティクス)の影響が濃く、システム的にはけっこう万人向けの作品だったと思っています。
ところがこれ、ぜんぜん関係無いところでプレイヤーを選ぶ作品になってしまいました。
主人公が男の娘だったんです。女性顔少年。
と、宣伝も兼ねたマクラもこの辺で。
今日はこの「性別の垣根を越える」話です。
もしかするとさんざん語られてそうな話ですが、よかったらおつきあいください。
望月は男の娘キャラが好きなのですが、もう少し広く考えると男性的な女性キャラも好きだし、TSF(性別転換)ものも好き。
ルーツは定かではありませんが、中学で初めて書いたファンタジー小説のヒーローも女装するシーンがあったためけっこう筋金入りです。
でね、本題なんですが「男装」って難しくないですか?
――――いえ、待ってください。女装が簡単だ、と単純に言うわけじゃないんです。
実際に女装をしている男性のお話や画像を見ると、ヘタすると本当の女性以上に繊細な注意と鍛錬をして仕上げているし、その努力は決して簡単なものじゃないでしょう。本当に頭が下がります。
また二次元の女装キャラにしても、一定の努力をしているというシーンは多く見られます。
でも、それは「女装のクオリティを上げる」ためのものであって。
単純な話、男性がスカート一枚履いただけでも『女装』は成立します。 でも、女性が男装をするのは、じつはなかなか困難です。というのは、「ボーイッシュな女性ファッション」にとどまってしまう可能性が高いから。
言い換えると、男性のファッションって基本的に女性のファッションに内包されちゃってるんです。たぶん。
ゲームだと、ときどき「女性専用装備はあるが男性専用装備は無い(もしくは性能の低いネタ枠にとどまる)」ということで、女性キャラが優遇される例がありますよね。
ドラクエのドレス系、FFのリボン、モンハンのセイラー装備なんかがわかりやすいでしょうか。
もちろん男性専用装備も多々あるけれど、パンツやらふんどしやら馬面やらで、性能はもちろん見目もあんまりよくない。この辺も、男性のおしゃれは女性のおしゃれに内包されちゃうって話なのでしょう。
鎧や重量級の武器だって、女性の戦士がいる以上性別限定にはなかなかしにくい。
そのため上半身が裸になるくらいじゃないとなかなか男性限定にはなりにくい、というのは理屈としてはわかります。
もうちょっと話を進めると「これって服に限る話じゃないかもな」と思うんです。
職業、アーキタイプ、キャラクター像、なんでも良いけれど「男性らしさに踏み込んだ女性」はそんなに違和感が無い一方で「女性らしさに踏み込んだ男性」はかなり特異なキャラクターになります。
考えてみると、そもそも日本語の単語事態がこの構造を持ってるのかもしれません。 わかりやすいとこだと「魔法使いと魔女」、「少年と少女」。“男性のみを示す語”がありません。「女流」なんて言葉も含めると、なんとなく本質が見えてきた気がします。 つまり、
「男性の領域」に女性が踏み込む
――――
「女性の領域」に男性が踏み込む
という構図じゃなくて、
男性が占有していた「中間領域」に女性が踏み込む
――――
「女性の領域」に男性が踏み込む
という構図なのかもな、と。
かつて女性は社会に出ることが難しく、女性用の文化に生きなければならなかった。 しかし、今や女性はすっかり社会に進出しました。完璧に平等か、と言いきれなくても、以前に比べれば相当フラットになった、ということに関しては異論はないと思います。仕事としてもそうでしょう。精神面でもそうでしょう。
それと同時にか追ってか、創作の分野においても「少女が男性顔負けの活躍をする、男性的役割を痛快にこなして見せる」というものが現れてきます。
これね、女性が踏み込んだのは「男性の領域」じゃなくて、「普遍的な領域」なんでしょう。
そして、女性が女性の領域に押し込められていた時代はかなり遠くなっています。具体的にはわからないけど、望月の年齢では既に生まれたときから変わっていたくらい。
だから男装にせよ男性的キャラクターにせよ、女性がやっても違和感が無いのはごく当然だといえる。少なくとも望月と同じか多少上の年代くらいの、「女性が中間領域にいることが当たり前になっている世代」にとっては。
一方で女装や女性的キャラクターは、男性がやると強い印象を与えることができます。創作物では多く見られるようになったとはいえ、ね。 踏み込む先の領域が非対称的だ、と思うと合点がいくな、という結論でした。
今夜のおはなしはここまで。
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